シラー – スパイシーなワインを作る国際品種

黒胡椒 ぶどう

シラーは、世界で最も栽培されている赤ワイン用ブドウ品種の一つです。力強く芳醇な味わいが特徴的で、しっかりとしたタンニンとスパイシーな香りが印象的なワインを生み出します。

フランスのローヌ地方がシラーの起源と言われていますが、現在ではオーストラリアやアメリカ、南アフリカ、チリなど世界各地で広く栽培されています。特にオーストラリアでは、国営ブドウ品種とも言えるほど、シラーズ(同品種の呼称)がワイン産業を支える重要な品種として確立されています。黒胡椒の香りが代名詞になっているシラーですが、オーストラリアのシラーズは、果実味の香りが強く黒胡椒をあまり感じません。いずれにしても、血肉のような動物っぽい香りも特徴的です。

シラーは濃厚でパワフル、しかし上品であり、熟成に優れた品種です。若いうちはしっかりとしたタンニンを持ち、熟成を経ることで滑らかでベルベットのようななめらかな質感へと変化します。スパイシーで複雑な香りと豊かな果実味が特徴的です。

力強くも上品な味わいは、肉料理をはじめ、しっかりとした味わいの料理と好相性です。一方で熟成を経たシラーは、単体でも十分に味わえる高級感のあるワインとして評価されています。

このように、シラーはその個性的でパワフルな味わいから、世界的に高い人気と評価を得ている赤ワイン品種なのです。本ブログでは、シラーの歴史から特徴、主要産地、ペアリングなど、この品種を深く理解するための情報を詳しく解説していきます。

シラーの歴史と由来

シラー(シラーズ)は、フランス南東部のローヌ地方が発祥の地と考えられています。この地域一帯では古くから栽培されてきた歴史ある品種です。18世紀にはすでに作られていたと考えられています。

19世紀まではフランスのローヌ地方が主な生産地でしたが、1860年代にフィロキセラの被害を受けたことから、産地が世界に広がっていきました。少しさかのぼりますが、オーストラリアへは1830年代に持ち込まれ、フィロキセラ被害を免れた同国で本格的な栽培が始まりました。

1980年代以降、オーストラリアのバロッサヴァレーやマクラーレンヴェイルなどの産地から、格付けされたシラーズが次々と登場し、高い評価を得るようになりました。オーストラリアのシラーズは、よりパワフルでスパイシーな味わいが特徴的です。

現在、シラー(シラーズ)はフランス、オーストラリア、アメリカ、南アフリカ、チリ、アルゼンチンなど世界中で栽培されており、特に力強く濃厚な味わいの赤ワイン用ブドウとして重宝されています。

シラーの特徴

シラーは、濃い色調とパワフルでスパイシーな風味が特徴的な赤ワイン用ブドウ品種です。

【色調】 シラーから造られるワインは、非常に濃い赤紫色の色調を持ちます。これはシラーが持つ高い色素濃度によるものです。若いワインでは青味がかった深い赤紫色を呈しますが、熟成が進むにつれ赤みを増し、ガーネット色やタワーブラウンに変化していきます。

【香り】 シラーの香りの特徴は、スパイシーで黒胡椒のようなニュアンスが顕著なことです。具体的には黒胡椒、赤唐辛子などのスパイシーな香りに加え、プラムやカシス、ブルーベリーなどの濃厚な黒果実の香りが感じられます。さらに熟成するとスモーキーな香りや、コーヒー、チョコレートのようなニュアンスも現れます。

【味わい】 シラーのワインは全体的に重厚でパワフル、タンニンの存在感が強く感じられる味わいが特徴です。しっかりとした骨格とコクのある味わいの中に、プラムやカシスなどの濃厚な黒果実の味が感じられます。若いワインではしっかりとしたタンニンが主役ですが、熟成が進むにつれてタンニンは滑らかになり、きめ細かく上品な味わいに変化していきます。

【熟成の影響】 シラーは大変熟成に適した品種です。長期熟成によってタンニンは次第に滑らかになり、余分な酸味やグリーンな味わいも解れて、よりまろやかで複雑味のある香り味わいが現れてきます。30年以上の熟成ワインでは、スモーキーでナツメグのようなスパイシーな香りが感じられるようになります。

シラーの個性的でインパクトのある味わいは、ブレンドワインに使われてスパイス効果を出すことも多く、赤ワインの代表的な品種として高く評価されています。

主要生産地とスタイル

シラー(シラーズ)は世界中で栽培されていますが、特に以下の主要生産地で際立った個性を持つワインが生み出されています。

フランス(ローヌ地方)

シラーの発祥の地であるローヌ地方は、北ローヌと南ローヌに大別されます。

【北ローヌ】 コート・ロティやエルミタージュが代表的なAOCです。比較的冷涼な気候の影響でスパイシーで複雑み、骨格のしっかりしたスタイルが特徴です。果実味よりもスパイシーな香り、タンニンの存在感が際立ちます。代表的な生産者にギガル、シャプティエなどがいます。

【南ローヌ】 シャトーヌフ・デュ・パプが最も有名です。暑く乾燥した気候の影響で、濃厚で太く、アルコール度の高いパワフルなスタイルになります。黒果実の風味が豊か、タンニンは滑らかで柔らかい味わいが多いのが特徴です。代表的な生産者にボーカステル、クロ・デ・パプなどがいます。

オーストラリア

オーストラリアではシラーズと呼ばれ、国営ブドウ品種の地位を確立しています。

【バロッサ・ヴァレー】 オーストラリア最高峰のシラーズの産地です。濃厚でコクがあり、黒オリーブやスパイス香が豊かで複雑味のあるスタイルが特徴的です。

【マクラーレンヴェイル】 冷涼な気候の影響でスパイシーで繊細な味わいに仕上がるのが特徴です。比較的軽めのボディで、ピノ・ノワールに近いエレガントなシラーズを生み出します。

その他

【アメリカ】カリフォルニアを中心に力強くパワフルなスタイルが主流で、高い樽香が特徴的です。

【チリ】 太陽の恵み豊かな気候を反映し、凝縮された果実味とスパイシーな風味が魅力です。
【南アフリカ】 暖かく乾燥した気候の影響でアルコール度数が高く、濃厚でパワフルな味わいに仕上がります。

このように、シラー(シラーズ)はそれぞれの産地の気候と土壌を反映し、個性的で多様なスタイルのワインを生み出しています。

食事とのマリアージュ

シラー(シラーズ)は、力強く濃厚な味わいが特徴的な赤ワインです。スパイシーな香りと存在感のあるタンニンが印象的で、しっかりとした味わいの料理との相性が抜群です。

【赤身の肉料理】 シラーの最も代表的なマリアージュは、肉料理、特に赤身の肉料理です。ステーキ、ロースト、ラムなどの濃厚な味わいが赤身の肉料理との絶妙な調和を生み出します。シラーの芳醇なボディと肉の旨味がお互いを引き立て合います。

【ハンガリー料理】 シラーの本場ローヌ地方に近いハンガリーの料理ともよく合います。パプリカを使った濃厚なシチューやグループなどのスパイシーさとシラーの香り、タンニンが絶妙にリンクします。

【スパイシーな料理】 シラーのスパイシーで複雑な香りは、カレーやメキシコ料理、中華料理など、香辛料を使った濃厚なスパイシー料理とも好相性です。辛味と渋味のバランスが絶妙です。エスニック料理全般がおすすめです。

【チーズ料理】 フランス産の熟成されたチーズも相性が良いです。シャンベール、エポワス、ブリーなどの強めの風味を持つチーズと、シラーの香りや味わいが好マッチングします。

【熟成度合いによる違い】 シラーは熟成の過程で香りや味わいが変化していきます。

若いシラーは青果香があり、しっかりと凝縮した果実味とタンニンが主役で、力強い料理に合わせると良いでしょう。中程度の熟成ワインは、スパイスやスモーキーな香りが楽しめ、味わいもなめらかになってきます。より繊細な料理とも相性が良くなります。長期熟成ワインは余分なタンニンが解れてベルベットのような質感になり、渋みよりも複雑な香り、上品な味わいが楽しめます。単体で気品ある味わいが堪能できます。

このようにシラーには料理との相性の良さはもちろん、熟成度によっても様々な楽しみ方があり、ワイン好きを飽きさせない奥深さがあります。

選び方、開け方、抜栓後の取り扱い

シラー(シラーズ)は味わいの個性が強い品種なので、その楽しみ方も少し工夫が必要です。ここでは、ラベルの見方、適切なデキャンタージュの方法、抜栓後の取り扱い方法などをご紹介します。

【選び方】 シラーを選ぶ際のポイントは、産地、生産年、価格帯などを確認することです。

産地によってスタイルが大きく異なるので、自分の好みに合うスタイルを理解しておくことが重要です。一般的にはフランスのローヌ地方は繊細で複雑味があり、オーストラリアは濃厚でパワフル、アメリカはしっかりとした樽香があるといった具合です。

生産年は温暖年か寒冷年かによって味わいが変わってくるため、ヴィンテージを意識するとよいでしょう。価格帯も重要なポイントで、1,000円前後の手頃な価格帯のものから、10,000円を超えるグランヴァンまで幅広い選択肢があります。

【開け方】 シラーの個性を最大限楽しむには、デキャンタージュ(別の容器に移し替えること)をおすすめします。デキャンタージュをすることで、空気に触れる表面積が増え、より早く酸化が進みます。これにより、タンニンが円みを帯び、香りや味わいが開いてくるためです。

熟成したリザーヴワインの場合は軽くデキャンタージュをするだけでも効果的ですが、若い垂直収穫の辛口ワインであれば、2-3時間ほどデキャンターに移して呼吸させるのが理想的です。

【抜栓後の取り扱い】 一般的に赤ワインは抜栓後、1-3日が最も旨味が引き出され香りや味わいが最高潮に達すると言われています。シラーワインも同様で、抜栓当日はややまだ閉じていますが、翌日から香りや味わいが開いてくるのが特徴です。

開封後3-4日が経過すると、次第に酸化が進み質が落ちてきますので、注意が必要です。品種によってはさらに長期に渡って美味しく楽しめるものもありますが、およそ4日程度が境界線と考えられています。

ワインセーバーなどの半導体製品を使えば、酸化による劣化を多少抑えられますが、基本的にはなるべく早めに飲み切ることをおすすめします。過度に酸化が進むと香りが薄れ、まろやかさが失われ、酸味やえぐみが増してしまいます。

このように、シラー(シラーズ)は個性的で力強い味わいを持つ分、その良さを最大限に引き出すには、適切な選び方、開け方、保存方法の工夫が重要になってきます。

最後に

シラー(シラーズ)は、世界中で親しまれている個性的でパワフルな赤ワイン品種です。その力強く濃厚な味わいと、スパイシーで複雑な香りは、多くのワインラヴァーを魅了してきました。

シラーの原産地はフランスのローヌ地方ですが、オーストラリアやアメリカ、チリ、南アフリカなど、世界中に広がりをみせています。各地域の気候風土を反映したユニークなスタイルのワインが生み出されており、シラーの多様性と可能性を感じさせてくれます。

若いシラーはしっかりとしたタンニンとボディ、凝縮した果実味が特徴的です。熟成を重ねるごとに、タンニンは滑らかになり、スパイシーでスモーキーなニュアンスが加わって味わいは複雑さを増していきます。長期熟成されたシラーは、まるでベルベットのようななめらかな質感に変わり、上品で気品あふれる味わいを堪能できます。

食事との相性も抜群で、特に肉料理やスパイシーな料理とは絶妙にマッチします。フレンチ、エスニック、家庭料理に至るまで、幅広いジャンルの料理とシラーを組み合わせて楽しむことができます。

比較的リーズナブルな価格帯の商品からグランヴァンまで、幅広い選択肢があるのもシラーの魅力です。気軽に楽しめるデイリーワインから、記念日やパーティーで賓客を驚かすような逸品まで、シラーは様々なシーンで活躍してくれる品種なのです。

シラーは濃厚で味わい深いワインでありながら、いつまでも飽きの来ない奥行きを持っています。産地の個性や熟成による変化を味わいながら、シラーの新たな魅力に出合えるのが、この品種を愛でる醍醐味といえます。まさに世界最高の赤ワイン品種と呼ぶに相応しい、素晴らしい魅力を持つブドウです。

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