本日は、フランス有数のワイン生産地であるローヌ地方について。
ローヌといえば、シラー、グルナッシュ、ヴィオニエなど。
フランス南東部に位置するローヌ地方は、世界最高峰のワイン産地の一つ。ローヌ川に沿って北から南に細長く広がるこの地域は、ブドウ栽培に理想的な環境に恵まれています。そして細長いことで、南北それぞれに特徴があるのがローヌ。
北ローヌは、川沿いの起伏に富んだ丘陵地帯で、高級ワインの作られるコート・ロティをはじめ、エルミタージュ、コンドリュー、サン・ジョセフなどの著名なアペラシオンがあります。一方の南ローヌは、地中海の影響を受けた暖かい気候の下、広大なプロヴァンス地方に広がっています。シャトーヌフ・デュ・パプ、ジゴンダスなど、フルボディのパワフルなワインで知られる銘醺地が点在しています。
ローヌ地方のワイン造りは、古代ローマ時代にさかのぼる非常に長い歴史を持っています。中世からブドウ栽培が盛んになり、19世紀後半にはフィロキセラ禍に見舞われましたが、現代に至るまで高品質なワイン生産の伝統が脈々と受け継がれてきました。テロワールの多様性と卓越した匠の技が結集した、世界最高レベルのワインが生み出されているのがローヌ地方です。
ローヌ地方の地理と気候
ローヌ地方は、ローヌ川に沿った細長い地域です。北部と南部では地理と気候が大きく異なり、それがワインの個性を作り分けています。
北ローヌの地理と気候
北ローヌ地域は、ローヌ川がアルプス山脈を源流として南下する中程に位置しています。ここは起伏に富んだ丘陵地帯で、川に沿って南北に細長く広がっています。代表的な産地コート・ロティは、ローヌ川の西側に面した断崖絶壁の畑で、この地域でも特に力強いワインが造られます。
北ローヌは内陸性気候の影響で、夏は温暖で日照りが多く、冬は非常に寒冷、寒暖差の大きい地域です。地中海性気候とは違い、年間を通して雨量は少なめです。日射しの強さと大きな日較差が、色濃くタンニンの豊かなワインをもたらします。
南ローヌの地理と気候
一方の南ローヌは、地中海に近いプロヴァンス地方の広大な平野部に広がっています。中核となるシャトーヌフ・デュ・パプ、ジゴンダスなどは、アヴィニョン周辺とニーム周辺に点在しています。
南ローヌは典型的な地中海性気候で、夏は暑く乾燥し、冬は比較的穏やかです。ミストラルの影響で風が強く、日照も豊富です。年間を通した暖かさと十分な日照りが、果実の凝縮感とパワーがあるフルボディのワインを生み出します。
代表的なぶどう品種
ローヌ地方で使われるぶどう品種は、北部と南部でかなり異なります。この地域の個性ある味わいは、主要品種の特徴が色濃く反映されています。
北ローヌの主要品種
北ローヌでは赤ワイン用品種としてシラーが圧倒的です。シラーは風味の幅が広く、スパイシーでタンニンが豊富で、長期熟成に適しています。白ワイン用ではヴィオニエが主力で、はちみつやドライアプリコンのような芳香と豊かな口当たりが特徴です。マルサンヌやルーサンヌなどの白品種も一部使われています。
南ローヌの主要品種
一方の南ローヌでは、グルナッシュ、シラー、ムールヴェードルが3大主力の赤ワイン品種です。グルナッシュは芳醇で甘みのあるベリー系の香り、ムールヴェードルは野生的で複雑な風味があります。これらをブレンドすることで南ローヌワインの典型的なスタイルが生まれます。白ワインではグルナッシュ・ブラン、ルーサンヌ、ブールブランなどが使われています。
その他にも、カリニャン、サンソー、ピクプールなど、マイナーだが重要な品種がいくつか存在します。個性豊かな幅広い品種がブレンドされ、ローヌらしい複雑で奥行きのある味わいに繋がっています。
北ローヌの主要アペラシオン
北ローヌ地域には、世界的に知られた著名なワイン村が点在しています。コート・ロティやエルミタージュをはじめとする、切り立った丘陵地帯の特級畑から、手間暇かけて造られた卓越したワインが生み出されています。
コート・ロティ
北ローヌの中核産地であり、ローヌ川西岸の断崖部に広がる畑が名を冠しています。炭化した粘板岩の斜面が、色濃くタンニン豊かでミネラル香るシラー、世界で最もエレガントなシラーが生産されます。の「ラ・ランドンヌ」などの最高峰のワインが生産されています。
エルミタージュ
北ローヌを通じてエルミタージュ丘陵の頂上付近一体が、最上のグランクリュと位置付けられています。標高が高く傾斜に富むことから、典型的なシラーの骨格と凝縮味が特徴です。赤だけでなく、白ワインや藁ワインも評価されています。
コンドリュー
コート・ロティとエルミタージュに続く北ローヌ銘醺地です。ヴィオニエ中心に作られた白ワインの品質の高さに定評があります。
南ローヌの主要アペラシオン
南ローヌ地域には、世界的に有名な銘醺ワインの産地が数多くあります。地中海性気候の影響を受けた温暖な気候風土の下、パワフルでフルボディの赤ワインが造られています。
シャトーヌフ・デュ・パプ
南ローヌを代表する最上級のアペラシオンです。アヴィニョンの北西、ローヌ川とデュランス川に囲まれた丘陵地帯に広がる葡萄畑はから作られるワインに使っていいのは、13種類の認可されたぶどうだけ。グルナッシュ主体のブレンドが特徴的で、タンニンは滑らかですがコクと複雑味に富んだスタイルです。
ジゴンダス
シャトーヌフ・デュ・パプに次ぐ南ローヌの銘醺地で、ローヌ川東岸に位置します。石灰岩の土壌で育つブドウは、香りの良さと柔らかなタンニンが特徴です。赤だけでなく、白やロゼのスタイルも素晴らしい評価を受けています。代表的な生産者にドメーヌ・サンタ・デュック、ドメーヌ・デ・トゥーレットなどがいます。
タヴェル
ローヌで唯一、ロゼのみに許されるアペラシオンです。グルナッシュメインで、フランス産大ロゼワイン産地の一つです。
造り手の紹介
ローヌ地方には、世界的に評価の高い傑出した生産者が多数存在します。ここでは北ローヌと南ローヌから、代表的で注目の造り手をいくつかピックアップしてご紹介します。
北ローヌの代表的な生産者
- ギガル :コート・ロティとエルミタージュのスペシャリストとして名高い。”ラ・ムーリーヌ”や”ラ・トゥリーヌ”など、最高のグラン・クリュを複数所有し、北ローヌを代表する造り手です。
- ジャン・ルイ・シャーヴ: 現代を代表するエルミタージュ巨匠。1481年に創業と古い歴史を持ち、ロバート・パーカーが100点を付けたことでも知られるローヌの神です。
南ローヌの代表的な生産者
- ボーカステル: シャトーヌフ・デュ・パプの名門生産者。認定された13種すべてを栽培しブレンドする唯一の生産者と言われています。
- シャトードサンコム:ジコンダスの天才と言われる生産者です。
また、近年は新進の若手生産者の台頭も目覚ましく、ローヌ地方のワインはさらに高みを目指しています。
ローヌワインの特徴とスタイル
ローヌ地方のワインは、北部と南部で大きく特徴が異なります。北ローヌは繊細さと複雑味、南ローヌはパワーとボリューム感が魅力です。それぞれの個性を生かしたスタイルが確立されています。
北ローヌワインの一般的な特徴
北ローヌは世界最高のシラーワインの本場です。コート・ロティ、エルミタージュ、コルナスなどの赤ワインは、色濃く骨格のしっかりしたタンニンの豊かな味わいが特徴です。香りは肉付きが良く、スパイシーでスモーキーなニュアンスを帯びています。
一方の白ワインは、ヴィオニエを主体とし、はちみつや花梨の芳香が印象的です。フレッシュな酸味とミネラル分、みずみずしい旨味が調和しています。赤白ともに熟成により複雑味が増し、10年以上の寝かせ旅に耐えうる驚くべき品質を誇ります。
南ローヌワインの一般的な特徴
南ローヌは力強くパワフルな赤ワインで知られています。グルナッシュをブレンドの主体に、シラー、ムールヴェードルなどが加わり、タンニンは丸みを帯びつつ、アルコール度数が高めで凝縮した味わいが特徴的です。
香りは黒い果実や甘草、スパイスなど豊かです。シャトーヌフ・デュ・パプは代表的なスタイルで、ボリューム感とコクがしっかりしています。ヴァキュワラスやジゴンダスは肉付きが良く、より複雑で洗練された風味があります。白ワインもミネラル分とボリューム感に富みます。
このように北と南では個性が対照的ですが、いずれのスタイルも長い熟成を経るほどにエレガントに味わいが溶け込み、ローヌ地方ワインならではの魅力が際立ちます。
8. ローヌワインとペアリング
ローヌ地方のワインは、濃厚でスパイシー、それでいて繊細な味わいが特徴的です。そのため、香り高く風味豊かな料理と好相性があります。北ローヌと南ローヌで適したお料理のスタイルが若干異なります。
北ローヌワインに合う料理
北ローヌのシラー種の赤ワインは、骨格がしっかりしていて複雑な香りと味わいがあります。そのため、干し肉やスモークした肉料理、骨付き肉のロースト、芳醇なスープやシチューなどが良く合います。また、トリュフやきのこなどのアース香もシラーの風味と相性が良いでしょう。
一方の白ワインは、ヴィオニエの芳香と厚みがあり、白身魚のハーブ焼きやリヨネーズ風の濃厚なソースを使った料理によく合います。アーティーチョークなどの野菜料理にも良く合うでしょう。
南ローヌワインに合う料理
南ローヌの赤ワインは凝縮感とパワーがあり、フレンチやイタリアンの香りの効いた料理が好相性です。仔羊やトマト煮込み料理、ラタトゥイユ、スパイシーな香草を利かせた料理などがおすすめです。
白ワインは、オリーブオイルとハーブを使ったプロバンス風の魚料理や、アーティーチョークを使った前菜が良く合います。南フランス地中海沿岸地方の郷土料理全般と相性が良いと言えます。
このように、北と南で個性の異なるローヌワインは、それぞれのスタイルに合わせてマリアージュを選ぶと素晴らしいハーモニーが生まれます。ローヌワインは料理との相性に優れていることが大きな魅力の一つです。
まとめ
ローヌ地方のワインは、その類稀なる多様性と卓越した品質で、世界的に高い評価を受けています。北ローヌと南ローヌという対照的な2つの顔を持ち、それぞれ独自の個性と魅力に溢れています。
北ローヌのシラーワインは、緻密で複雑味に富む傑作が生み出されています。コート・ロティ、エルミタージュ、コランシャンなどの銘醺地から、骨格のしっかりしたタンニン豊かな味わいと、スパイシーで芳醇な香りが特徴的です。ヴィオニエを主体とした白ワインも、フレッシュな酸とはちみつのような芳香が素晴らしいです。北ローヌのワインは長期熟成を経るほどに深みと柔らかさを増し、その味わいは格別です。
一方の南ローヌは、パワフルでボリュームのあるグルナッシュ主体のブレンドが魅力です。シャトーヌフ・デュ・パプ、ジゴンダスといった名門アペラシオンから、凝縮した果実味とスパイシーな風味が広がります。白ワインもミネラル分とボリューム感に富んでいます。南ローヌのワインはよりフレンチで力強い印象があり、料理との相性も抜群です。
それぞれ異なる魅力を持つローヌ、実力もポテンシャルも、ボルドーに決してひけはとりません。ボルドー、ブルゴーニュが高騰する今だからこそ、ローヌの持つ魅力を再確認したいですね。ローヌワインを楽しみましょう。
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