ワインの世界は常に進化しています。気候変動の影響、新たな醸造技術、消費者の嗜好の変化が絡み合い、ワイントレンドは毎年微妙に変化します。2025年、ワイン業界はどのような方向へ向かうのでしょうか。今年注目すべきワインスタイルを予測します。
1. 低アルコールワインの台頭
健康志向の高まりとともに、アルコール度数を抑えたワインが人気を集めています。特に、アルコール度数が11.5%未満のワインが注目されており、食事との相性も良く、日常的に楽しみやすいのが特徴です。
具体例
- ドイツ・モーゼル地方のカビネット・リースリング(爽やかな酸味と軽やかな甘み)
- オーストラリアのセミヨン(シドニー近郊のハンター・ヴァレー産が代表的)
- アメリカの低アルコールピノ・ノワール(オレゴン産で12%未満のものが増加)
2. オレンジワインの新潮流
オレンジワイン(白ブドウを赤ワインのように醸したスタイル)は、近年注目を集めています。特に、ギリシャやジョージアなどの伝統的な産地に加え、フランスやカリフォルニアなどの主要ワイン産地でも新しい解釈のオレンジワインが登場しています。また、短期間のスキンコンタクトで作られるライトオレンジワインが、より飲みやすい形で広がる可能性が高いです。
具体例
- ジョージアのクヴェヴリ(壺発酵)オレンジワイン
- イタリア・フリウリのオレンジワイン
- カリフォルニアのナチュラル系オレンジワイン
3. ハイブリッド品種ワインの進化
気候変動に対応するため、耐病性や耐熱性に優れたハイブリッド品種の開発が進んでいます。特に、ピウィ(Piwi)と呼ばれる新しいハイブリッド品種が注目されており、ヨーロッパを中心に広がっています。
具体例
- ヨハニター(Johanniter):リースリング系のハイブリッドでフルーティーな白ワインに
- マルセラン(Marselan):カベルネ・ソーヴィニヨンとグルナッシュの交配品種でフランス南部や中国で注目
- リリオラ(Liliorila):フランスで開発された耐病性に優れた品種
4. クラフト・スパークリングワインのブーム
シャンパーニュやプロセッコの人気は変わりませんが、それに続く形で小規模生産のクラフト・スパークリングワインが市場を賑わせています。特に、「ペットナット」(ペティヤン・ナチュレル)と呼ばれる自然な泡立ちとフルーティーな味わいが人気です。
具体例
- フランス・ロワール地方のペットナット
- スペイン・カタルーニャのクラフト・カバ
- カリフォルニアのナチュラルスパークリング
- オーストラリアのアンセストラル・メソッド・スパークリング
5. 発酵技術の進化による「ハイテク・ナチュラルワイン」
「ナチュラルワイン」はすでに定番ですが、2025年の新潮流は、科学的アプローチを取り入れたハイテク・ナチュラルワインです。例えば、AIによる発酵管理や酸化管理技術の向上など、従来の「自然派ワイン=不安定」というイメージを払拭し、より洗練されたナチュラルワインが主流になっていく可能性があります。
6. 地元品種復興ワインの再評価
大手ワイン産地の代表的な品種(シャルドネ、カベルネ・ソーヴィニヨンなど)とは別に、各地域のマイナー品種が再評価される流れが強まっています。特に、ギリシャのアシルティコやスペインのガルナッチャなど、ローカル品種の独自性を前面に出したワインが注目されています。
具体例
- 日本のマスカット・ベーリーA
- ギリシャのアシルティコ
- ポルトガルのバガ
- オーストリアのロートギプフラー
まとめ:2025年のワインシーンは「個性」と「技術革新」が鍵
2025年のワイン業界は、クラシックなワインスタイルに革新を加えたものがトレンドの中心になりそうです。低アルコールワインやハイブリッド品種、テクノロジーを活用したナチュラルワインなど、「飲みやすさ」だけでなく「環境への配慮」「技術革新」「新しい味わいの探求」が重要なテーマとなるでしょう。ワイン愛好家として、こうした新しいスタイルのワインに出会う楽しみを2025年も存分に味わいたいものです。